読み解きの池

様々な映画、アニメ、文学等を読み解いていこうと思います。

天気の子を読み解く

ブログを読んでいらっしゃる皆様、初めまして。

流ㇾ水と申します。

 

大ヒット上映中の天気の子を、いち早く読み解いてみました。

前作「君の名は」よりも格段に構成力が増しています。素晴らしいです。

はやくBD化して欲しいです。もっと深いとこまで潜りたくなる、そんな作品です。

ネタバレがあります。注意してお読みください。

 

この物語はアマテラスとスサノヲの物語がベースになっています。

アマテラスは陽菜、スサノヲは帆高、そしてツクヨミが出てきます。凪です。役割が変わることもあります。

 

今回は3部構成です。
アマテラスとスサノヲの誓約
スサノヲの暴走
岩屋戸
この3つで描かれています。

 

1 アマテラスとスサノヲの誓約

 

帆高の父親はイザナギです。帆高と何らかの理由で喧嘩をし、殴ります。冒頭、鼻を怪我しており、絆創膏を貼っています。
映画の中では語られておりませんが、小説のほうで、父親に殴られてできた傷だとわかります。帆高の母親は出てきません。
言及もありません。片親である可能性も考えられます。

 

その後、家を飛び出し、自転車で走ります。雨雲から伸びている光の筋を見つけ、追いかけます。
丘を登っていきますが、とうとう追いつかず、岸の崖端に出ますが、海原をフェリーが光を追いかけるように進んでいます。
それを見て、あの光の中、つまり東京へ行こうと決心します。

 

古事記では、イザナギがスサノヲに海原の支配を命じましたが、イザナミのいる黄泉の国へ行きたいと駄々をこね、それが原因で天地に甚大な被害を与えます。イザナギが怒り、彼を追放します。

父親(イザナギ)の怒りにふれ、自発的ですが、家を飛び出します。そして天地に甚大な被害を与えます。
父親に何故殴られたのか、理由はわかりませんが、母親絡みかもしれません。

 

ここら辺は、映画版、小説版共に時系列がバラバラです。

 

光にたどり着いた人がいます。陽菜です。光の差し込む廃ビルに向かい、祈祷をしながら鳥居をくぐります。
母親の役割である、巫女の役目を受け継ぎます。母も巫女です。そして恐らく、この直後に母親は亡くなっています。母がしていたチョーカーを陽菜が付けています。

チョーカーに力があるわけではありませんが、受け継いだということがわかるよう、暗示されているアクセサリーです。
父親については全く言及がありません。廃ビルの屋上にある神社は稲荷神社です。そして高天原も高いところにあり、大神稲荷です。

イザナギはアマテラスに高天原を収めるように言います。なので、陽菜もことあるごとに稲荷神社に行きます。

 

陽菜がスカウトマンの木村とその取り巻きと共に、水商売の店へ入ろうとします。そこへ帆高が現れ、木村と陽菜の間に割って入り、陽菜を連れて逃げ出します。回り込まれた取り巻きに帆高が倒され、木村に馬乗りになって殴られます。その時、帆高は拾った銃を木村に向けて発砲します。
当たりはしませんでしたが、腰の抜けた木村をよそに、陽菜が帆高の手を引き、廃ビルへと向かいます。

 

スサノヲは、アマテラスに会ってから黄泉の国へ行こうと思い、アマテラスが納める高天原へ昇ります。
すると、大地が揺れ動き雷のような轟音が響きます。ただならぬ気配に、スサノヲが高天原を奪いに来たと思い、
アマテラスが武具を装備し、スサノヲを迎えます。

この拳銃はスサノヲの引き起こす天災そのものです。発砲の音は雷を表しています。
そして陽菜は、木村と合意の上で水商売を始めようとしていました。敵ではありません。つまり、木村は陽菜のボディーガード、いわば武装した状態です。

 

廃ビルで、陽菜は勝手に割って入ったことと、銃を撃ったことに怒ります。
帆高は自分のしたことを反省し、拳銃を投げ捨て、その場にうずくまります。
その後、反省している帆高を見て、陽菜が戻ってきます。自分の能力を見せ、もうすぐ18歳だと嘘をつきます。

 

アマテラスも、高天原に来たスサノヲに警戒し、悪さをしに来たのか問い詰めます。スサノヲは弁解しますが、聞き入れてもらえず、悪意がないなら証明しろと言います。もうすぐ18歳だと嘘をついたのはアマテラスが姉だからです。
そして帆高は16歳です。弟です。

 

その後、帆高は陽菜の能力でお金儲けすることを考え付きます。陽菜もそれに応じ、帆高をビジネスパートナーとし、弟の凪に紹介します。弟は小学生ですが、帆高より恋愛の経験が豊富なので、先輩と呼ばれます。

 

スサノヲはアマテラスの疑いを解くために、誓約をします。
そしてアマテラスとスサノヲで神を生み出します。

帆高と陽菜はビジネスパートナーです。一緒に仕事をするという契約をします。
弟の凪を帆高が先輩と呼ぶのは、ツクヨミがスサノヲのお兄ちゃんだからです。
しかし、古事記でも出番が少ないツクヨミは、特にストーリーにかかわってきません。

 

2 自然霊、説話との因果関係

作中の占い師から自然霊についての説明が出てきます。

自然霊には4つのタイプがあります。龍神系、稲荷系、天狗系、弁天系です。

 

・稲荷系は、楽観的、好奇心旺盛。いろいろな情報を求め、あらゆるものに手を出したがります。勤勉で頭の回転も速いため、取り組みだすとすぐに習得し、新しいものに目移りします。職にも食にも困りません。

陽菜はマックの店員をクビになりますが、すぐに水商売にスカウトされます。
水商売は、帆高により阻止されますが、すぐに晴れ女として、商売を成功させます。そして食にも困りません。陽菜は家で、工夫を凝らした料理を作ります。警察に追われ、ラブホに逃げ込んだ際も、たくさんのジャンクフードにありつけます。

 

・天狗系は、個性的な芸術家タイプで、才能豊かでアイディアも豊富です。
エネギッシュで逆境に負けない強さを持っています。
直感に優れ、度胸もあり、強い信念を持ち頑固です。
頑固さを押し出すと、視野が狭くなり、運気が落ちます。

陽菜に晴れ女を商売にするよう勧め、サイトを立ち上げたのは帆高です。
アイディア性があります。そして、陽菜を助けるためならどんな手段でも使います。銃だって撃ちます。陽菜を助けることで、東京は沈みます。

 

龍神系は白黒はっきりさせ、決断力があり、人をまとめる力に長けているリーダータイプです。決断が早く、物事を瞬時に理解して行動に移し、面倒見がいいです。勝負強さもあります。

陽菜の弟、凪は最初、部屋に上がり込んできた帆高に対し、嫌悪感を抱きますが、陽菜からビジネスパートナーと紹介されると、途端に打ち解け、協力を惜しみません。テルテル坊主の着ぐるみだって着ちゃいます。帆高が陽菜への好意をいち早く察し、告白するように勧めます。最初に陽菜に指輪を上げるタイミングも、失敗しましたが、凪が作ります。陽菜が消え、警察に児童施設へと連れていかれた時も、現彼女と元カノに協力させ、脱走し、拳銃を突き付けられている帆高を助けます。人をまとめ上げ、行動します。

 

・弁天系は、努力家で頭も良く、気配り目配りできる天性のマネージャータイプです。他人の補佐役に徹し、思いやりがあって優しいタイプです。高い金運もあります。美しくきらびやかな人が多いです。

これは、圭介と夏美です。二人は親戚です。親戚ということで、弁天系が分割され役割を持っています。圭介は会社を経営しています。金を持っています。娘と亡くなった嫁へ愛情を欠かしません。優しいです。また、一度帆高を突き放しますが、最後は助けます。その後、会社が大きくなっています。
夏美も思いやりがあります。圭介のことを案じ、圭介の娘を気遣ったり、陽菜へ人柱の事を教えます。露出の高い服が多いです。妖艶です。最後はやはり、パトカーに追われている帆高をカブに乗せて助けます。

 

掃晴娘との関連性

中国の説話に、掃晴娘というお話があります。

雨が続き、水害に陥っている村がありました。村に住む少女の掃晴娘は、水の神である、龍神に雨を止めてくれるように祈りました。
天上から龍神の妃になれば、雨を止めるという声が響きました。掃晴娘はこれに応じ、雨は止み、空は晴れました。掃晴娘の姿はありませんでした。
それ以来、中国の人は、雨が続くと掃晴娘を偲んでテルテル坊主を作るようになりました。

天気の子にもテルテル坊主が出てきます。着ぐるみを着るくらい強調してきます。陽菜の行動とも合致します。
しかし、作中では神社での古来よりの言い伝えや、瀧のおばあちゃんが「200年前、東京は海で、江戸そのものが海の入り江だった。」
と言う台詞があります。これはおそらく、榊原篁洲を暗示しています。江戸時代の儒学者で、榊巷談苑にて、この話を広めました。

 

狐の嫁入りとの関連性

日本にも、掃晴娘に感化されたのか、それより前にあったのかは定かではありませんが、狐の嫁入りという話がありました。
これは逆のパターンになっています。

日照りに悩む村で、村の外れにある池の龍神様に雨乞いをすることになりました。
そして、龍神様に捧げる生贄として、人に化けるのが得意な女狐を選びます。
村一番の男前をその女狐に接触させ、男女の絆を育み、嫁入りに来たら生贄にする計画です。
しかし、この男前と女狐は本当に惹かれてしまいます。
男はすべてを告白し、逃げるように進言しますが、女狐は全てを承知したうえで、嫁入りを受け入れます。
そして村人は嫁入りに来た女狐を生贄に捧げます。
空は晴れ渡っているにも関わらず雨が降り始めます。これが嫁入りした狐の涙だと言われました。

 

書いてて思ったのですが、どうもロマンチックですね。雨を降らせたのは龍神様だと思いますが。

 

天気の子においても、警察からの逃走シーンで、帆高が陽菜と凪だけでも逃げ延びろという会話があります。陽菜は逃げずに能力を使い、その後消えます。
どうやら、掃晴娘と狐の嫁入りの話がミックスされているようです。

 

3スサノヲの暴走

 

陽菜は、帆高に依頼された仕事をこなします。帆高を助けるためにも能力を使います。
スサノヲは大暴れし、アマテラスが尻拭いのために神の力を使います。

 

圭介と夏美が、気象神社を訪れ、神主に取材をするシーンがあります。
この気象神社のモデルは、高円寺氷川神社です。祀られている神様は、八意思兼命です。天岩戸で引きこもっているアマテラスを外に出すため、あれこれ知恵を絞る神様です。神主も、巫女の力について、人柱について説明します。神主は八意思兼命です。

 

帆高一同が警察に追われるシーンで、帆高が警察に捕まります。陽菜が「お願い」と心の中で叫ぶと雷がトラックに落ち、爆発炎上します。明確な描写はありませんが、この時多数の怪我人が出ているはずです。陽菜は恐ろしくなります。その後、ラブホに泊まりますが、陽菜は皆が寝ているとき消えます。

 

アマテラスも弟の度が過ぎたイタズラで、機織女が亡くなります。アマテラスは恐ろしくなり、天の岩屋戸に引きこもります。


帆高が警察に捕まったことが原因で、陽菜が雷を呼び寄せます。多数の被害が出て恐ろしくなり、消えます。

 

4雨男と雨女の関連性

 

帆高が雨男という解釈を度々見ますが、間違いです。
帆高は天狗系の人間です。東京に雨が降るトリガーと晴れにするトリガーを作りましたが、自身が天気を変えることはありません。地元に帰った時の、卒業式のシーンでは雨が降っていませんし、そもそも物語の冒頭から東京は既に大雨です。圭介以外の仕事にすべて断られています。

 

では雨男は誰かというと、凪です。
彼は龍神系です。

 

陽菜は晴れ女ですが、力を行使しないと晴れません。最後は、巫女として力を失い、雨が降り続けます。

 

陽菜が空につながっているのは、龍神と繋がっているわけではありません。母親と繋がっています。母親も巫女でした。だから母親の加護を受けています。
瀧のおばあちゃんの家で、迎え火をまたいだことがある種の儀式になっている気がします。

 

陽菜が空と繋がっていますが、弟である凪は繋がっていないのでしょうか。

実は、凪が龍神と繋がっています。

よく、龍神を祀る神社を信仰すると仕事や恋愛などが成功すると言われています。実際、凪は恋愛で成功しています。モテモテです。凪は龍神の加護を受けています。晴れにする仕事も、弟の凪が帰ってくるまで依頼は来ていません。帰宅した途端、依頼が舞い込んできます。更に、帆高が圭介の元で仕事を貰えたのも、凪のおかげです。

圭介の元へバスに乗って行くシーンで、凪と初めて出会います。凪の加護すごいです。

 

そもそも龍神というのは気候の管理者です。三注の龍神が東京に現れたのも異常気象を元に戻す為です。これを巫女の力によってめちゃくちゃにされた為、龍神は陽菜を天界へ幽閉し、晴れにする能力を奪いました。龍神にしてみればいい迷惑です。帆高を龍神が飲むシーンがあります。帆高に対する怒りを感じます。当たり前です。巫女をそそのかし能力を使わせてたのですから。


陽菜の力を呪いの類だと解釈しているサイトが多々見受けられますが、これも辻褄が合いません。使い方を誤ったのは陽菜と帆高です。

陽菜と凪は、気候の均衡が保たれている象徴でした。帆高がバランスをめちゃくちゃにした為、均衡が崩れました。

 

5岩屋戸

 

ラブホに泊まった翌朝、帆高と凪は、陽菜がいなくなっていることに気づきます。そして、2人の居場所を突き止めた警察に連行されます。天の岩屋戸からスサノヲは、最後の追放される部分まで出番がないので、ここでの帆高の役割はタヂカラオです。警察署から脱走し、陽菜を探す為、廃ビルへと走り出します。
アマテラスが岩屋戸から顔を出していくように、じわりじわりと廃ビルへ近づいていきます。いいシーンです。
途中、夏美がカブで帆高を拾い上げます。夏美はアメノウズメです。この時の格好も露出が高いです。カブから降りて、金網を飛び超える時に頰に傷が出来ます。陽菜のいる、天界へ行くための儀式だと思われます。

 

凪の役割も変わっています。
廃ビルに到着すると、警察に取り囲まれますが、圭介と凪の活躍で神社へたどり着けます。
この時の二人はアメノコヤネとフトダマだと思われますが、明確ではありません。ただの演出かもしれません。

 

そして鳥居を潜り、空の上に出ます。
この時、三注の龍神が出てきます。
この三注は、闇御津羽神と高龗神と闇山祇だと思われます。

水と雨を司る、天候の神様です。

 

その後、陽菜を救出します。
陽菜を救出した後、気を失います。目が覚めた帆高はスサノヲに戻ります。
スサノヲはこれまでの事件の原因を作った罰として高天原を追放されます。
帆高も警察に捕まり、元にいた島に戻されます。

 

全体の流れはこうです。

 

1.帆高が船に乗って東京へ向かう。
2.陽菜が空から落下して、能力を手に入れる。
3.帆高が陽菜のために木村と戦う。
4.能力を使い、人々の役に立つ。
5.能力を使い、雷を落とし、被害を与える。
6.帆高が陽菜を探すため、警察と戦う。
7.陽菜、帆高と落下し、能力を失う。
8.帆高、高校を卒業し、船に乗って東京へ向かう。

 

1と8、2と7、と全てが対になっています。

 

また、君の名はの登場人物と、天気の子の登場人物の設定と行動が逆になっています。

 

瀧は母親がいて父親は出てきません。帆高は父親がいて母親は出てきません。

 

三葉は、父親が出てきて、母親は出てきません。妹がいます。
陽菜は、母親が出てきて、父親は出てきません。弟がいます。

 

君の名はでは三葉のおばあちゃんが出てきました。
天気の子では瀧のおばあちゃんが出てきました。

 

瀧は糸守町すべての人を救いましたが、帆高は陽菜の為に東京を犠牲にしました。

 

三葉は、瀧と入れ替わっているときに胸を揉んだり、お風呂に入ることを禁止しますが、
陽菜は、帆高に止められこそしましたが、水商売に抵抗がありませんし、帆高に透けている胸を見せます。

 

瀧と三葉は告白し、明確に恋人同士になり、天気の子では結婚しています。

帆高と陽菜は、指輪を渡しただけで告白していません。うやむやな関係で終わります。

 

3作目に、もし帆高と陽菜が出た場合、恋愛関係に発展しないか、別れているか振られるか、いずれにせよ、いい関係で終わっていないと思われます。

 

まだまだ、見逃しているシーン、ラストの解釈、考察できる余地がかなりありますが、読み解きはこれにて一旦終わりです。

 

次回は、読み解きはあまり関係ありませんが、ラストシーンがどういう意味を持つのか、考察していきます。物語の中層あたりなので、仏教とかメソポタミア神話とか、色々絡んでいそうです。うまくまとめられるよう、努力します。

 

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

 次回もお楽しみに。